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「接遇のチカラ」(31)  相手のために待てる力~思っていても伝わらない

こんにちは!第2・4月曜日を担当するコミュニケーション講師の松原です。
円滑なコミュニケーションをつくりだすには、相手に対する想像力が必要です。その上で接遇のスキルを使い、より良い関係をつくりだしていきます。そこで大事なスキルのひとつに「待てる力」があります。今回は前回に引き続いて「待てる力」についてお話します。
先日、「とっても親切」と評判な医師の方の、外来診療の様子を見せていただきました。その評判のヒミツは何だったのか?それは「相手のペースに合わせている」からでした。
自分の病状をテキパキと話す患者さんの時には、やはり早いペースで、診断の説明や処方薬などについて伝えます。
患者さんには比較的ゆっくりペースの方もいれば、自分の病状や質問を思い巡らし会話が止まってしまう方もいます。そんな時、この先生は柔らかな表情でじっと待っています。
他の医師ならば、患者さんが考えている時に「たとえば、こんなことはありますか?」「この薬のいいところは~」など話しかけることが多いです。診察のスピードを上げるために行われる、よく見る光景です。しかし、その先生はじっと待っているのです。そして、患者さんが話しだしたら、それを聞き、同じような言葉の早さで説明や質問をしていました。つまり、この先生は、目の前の患者さんのペースに合わせることで、好感を持たれていたのです。
「この人は今、考えているんだな。こっちの言葉でかき乱さないようにしよう」
「ゆっくりテンポの人だから、のペースに合わせよう」
と、想像力を働かせての実践が「とっても親切」との評価につながったのです。
コミュニケーションは相手ありきのキャッチボールです。ですから、相手を尊重する姿勢を表したいなら、自分のペースを保ちたいという心に「待った」をかける力が必要です。つまり、「相手のためを考え、自己をコントロールする」ということなのです。
自分の伝えたい思いを大切にするために、相手のペースを大切にする。それも接遇のスキルであり、マインドなのです。

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