こんにちは!第2・4月曜日を担当するコミュニケーション講師の松原です。
「思っていても伝わらない」を解消するのが接遇のスキルです。今回は、思っていることを伝えられないもどかしさに気がついたエピソードをご紹介します。
美容皮膚科に勤務するAさんは、患者さんからお話を伺いカウンセリングをする担当です。医師の診療の前に行うカウンセリングは医院にとって信頼を預かる重要な仕事です。主任になり、クレーム対応に携わることになりました。まず取り組んだのがクレームの手紙への返信です。
手紙には二つの訴えがありました。応対した女性スタッフBが「肌の状態や希望を何度も尋ねてきてしつこい」と、「納得のいかない施術メニューを、ごり押しした」というものです。
Aさんは、Bさんをヒアリングしました。すると、彼女の対応は医院として納得できるものでした。何度も質問をしたのは、患者さんの返答が「別に…」や「特に…」ばかりであいまいだったから。施術メニューのごり押しは、最適なメニューを勧めても、患者さんはネットで見た別の施術にこだわり、聞く耳を持たなかったから、とのことでした。
(とはいえ、御不快にしたのだから謝罪は絶対。でも、院の信頼回復のために、スタッフの意図もお伝えしよう)
そう思って返信に取り掛かったAさんですが、なかなかうまく書けません
「この度は、当院のスタッフが大変ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございませんでした。お話を伺い、最適と思われるメニューをご提案いたしましたが、ご不快にさせてしまい、お詫び申し上げます」
(…あれ?これじゃこちらが全部悪いみたい)
「何度も質問をしたのは、お答えがあいまいだったためです。当院は、最適なメニューをお勧めしており、スタッフに落ち度はございません」
(…あれ?これじゃまるで患者さんを責めているみたい)
Aさんは、書きたい内容はちゃんと心に決まっているのに、それを相手に伝えるスキルがないことに気がつきました。
そのスキルこそが「接遇」なのです。丁寧な言葉で謝る敬語力だけでも、自分の意図を述べる説明力だけでも、適切な接遇はできません。では、どうすればよいのでしょうか。
次回からは、様々な接遇のスキルを具体的に解説していきます。