前回、誰もが「強くなりたい」と願うものだと述べましたが、コミュニケーションにおいても強さは求められます。
話し方に関する研修や講座、雑誌や書籍の執筆をしていると、多くの人から、さまざまな悩みを相談されます。そうした悩みの多くは対処法さえ分かれば解決できるものですが、しかし根本の原因は、心の弱さにあると私は感じています。
例えば「言いたいことがうまく言えない」と悩む人が多くいます。それに対して講師・著者は「こういう順序で、こういう表現を使えば、うまく伝わりますよ」と知識やスキルをアドバイスできます。そして実際、そのアドバイスをきちんと実行すれば、たいていの事態は改善します。
しかし、いくら知識やスキルを学んでも、その人がこう思っていたらどうでしょう。
「私なんかが言いたいことを言ってもいいんだろうか・・・」
「はっきり言ったら相手に嫌われないだろうか、周りはどう思うだろう・・・」
「余計なことは言わず、黙っていた方がいいんじゃないか・・・」
これでは、うまくいくはずはありません。
コミュニケーションの悩みがある人の多くは、こうしたためらいを持っているようです。そのためらいが心の弱さであると、私は思います。
この弱さを振り捨て「嫌われようと、批判されようと言いたいことは言う」と決断する強さを持つ。それがコミュニケーション力向上の第一歩です。
「言いたいことは言う。しかし、やみくもに発言しても効果はない。より説得力をつけるにはどうしたらいいか」。こう考えて知識やスキルを活用してこそ、うまくいきます。これは「嫌われないよう、批判されないよう、事を荒立てないように言うにはどうしたらいいか」という弱腰の姿勢とはまったく異なります。
コミュニケーションに悩みを感じたら、まず自分の心の姿勢はどちらか、振り返ってみてください。
コミュニケーション力の「強さ」