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「接遇のチカラ」 (42) 「聞く」で気がつかせること

こんにちは!第2・4月曜日を担当するコミュニケーション講師の松原です。(今月は変則)しばらくお休みをいただいておりましたが、引き続き「聞く」をテーマにお届けします。
 悩みは心の中で漠然としている場合があります。自分の思いでありながら、はっきりとした言葉にできないのでモヤモヤします。そのモヤモヤの解消のカギが「聞いてもらう」です。
私は、悩みやわだかまりを抱えている人と、一対一で「話を聞く」ということも行っています。その中から「聞いてもらえたら心の内に気がつけた」エピソードをご紹介します。
涼子さんは入社5年目の中堅社員です。上司から、そろそろ昇進試験を受けてはどうかと言われましたが、彼女はその申し出に「いや、私にはそんな…」とためらっていました。
そんな中、私との会話の時間で、彼女はこう言いました。「試験を薦めてくれたのは嬉しい。でも私なんてランクアップの資格はない」
とはいえ、涼子さんは悩んでいます。試験を受けたくない理由をしっかり持っているならば、「悩み」にならないはずなのに…。
彼女がその後にお話ししてくれたのは、昨年度に昇進試験に合格した先輩についてでした。先輩はどんなに多忙でも、声を掛けたら必ず応じてくれるし、涼子さんが困っている時には、さらりと助けの手を差し伸べてくれる、大きな視野と広い度量が常にあるそうです。そう話していく中で、彼女は「あっ」と声をだしました。悩みの根っこは、「こうありたい」という理想像の先輩と自分を比較し続けていることだったのです。
涼子さんは、そこに気がついた瞬間、とてもすがすがしい表情になりました。「私に試験を薦めた理由を、上司にきいてきます」と部屋を出ました。憧れていた「先輩」との姿とは違うかもしれないけれど、自分なりの姿をつくれるかもしれない、との希望が広がったそうです。
今回も私はお話を聞いているだけでした。とはいえ涼子さんは自分の言葉を自ら聞くことで光を見出しました。モヤモヤを口に出してみると、こうして自ら発見ができるのです。
次回は、もし「聞いてもらえていなかったら」を考えてみます。

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