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「接遇のチカラ」(45) 「座談十五戒」から学ぶ~馬鹿丁寧なるなかれ

 こんにちは!第2・4月曜日を担当するコミュニケーション講師の松原です。
 接遇のスキルで、コミュニケーションはより良くかわります。徳川夢声氏「話術」の「座談十五戒」から、このコツを学びます。
○第4戒 馬鹿丁寧なるなかれ(P72~74)
 「謙遜は美徳に相違ないが、過ぎたるはやはり困りものです。」と、徳川夢声氏はこの戒を始めます。日本には控えめなふるまいが良いとの文化があります。他人を高く評価し、自分を低く表現します。この本が出版された当時(昭和22年)は、今よりもその傾向が強く「美徳」
とされていました。とはいえ、当時でも、いきすぎは不快をもたらします。
 この戒の前半に「芸界の古老」が出てきます。「あんまり丁寧すぎて、馬鹿々々しくなる」と夢声氏は感じます。この方は誰に対しても「馬鹿丁寧」であり、困惑されているとは気がついていません。
 これと対照的なのが、後半に出てくる劇作家です。前述の古老のように丁寧ですが、実は相手を選んでいます。この人は実は皮肉屋で威張り屋。「始終顔の合ってる仲間に対しては、大変な暴君」ですが、そうではない人には「気味の悪いほど丁寧」です。このような裏表のある人に信頼を寄せられるでしょうか。
 今の社会に置き換えると、パワハラやモラハラをする人にみえます。自分に利益をもたらす人には丁重だが、身内になった途端、そうではなくなってしまう。そんな姿が思い浮かびます。とはいえ、本人には自覚は無いのかもしれません。しかし、あまりに落差があると、理不尽さを抱かせてしまうのです。
 丁寧なのは良いことです。しかし、過剰だったり、態度を変えすぎたりしては、良い結果を生みません。夢声氏は最後にこう結んでいます。「ものには度があります。座談にはバランスが肝要です」
 もし、古老や劇作家のような人に出会ったら、不快に思うのではなく、反面教師として観察するのもいいですね。
 次回の「お世辞屋たるなかれ」で、会話を滑らかにする「お世辞」の匙加減について考えます。
※「話術」(新潮文庫) 著者:徳川夢声 新潮社
(1947年に秀水社から出版されたが、2018年に新潮社より復刻)

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