■ワンポイント・エッセイ
プロ意識を体現する(14)謙虚以上、傲慢未満(その10)
占部 正尚
研修終了後、受講生に書いてもらったアンケートの中には、時
として講師のコンセプチュアルスキル(概念形成力)を大いに刺
激してくれるものもあります。
例えば、ロジカルシンキング(論理的思考)研修で「昔からあ
る学説が、現代のビジネスシーンでどのように活かされているか
を知りたい」といったコメントを目にしたことがあります。
これを「学説は学説、実践的には役に立たないよ」と切り捨て
ることは簡単ですが、私は帰納法と演繹法について解説を加えな
がら、職場の問題解決への応用の仕方をプログラム化しました。
その結果、顧客企業から高く評価され、十年ほど連続で講義する
に至っています。
類似した話は講師仲間からも聞き及んでおり、マナー研修で
「マナーを良くすることで、顧客満足度が高まった実例を知りた
い」、コミュニケーション研修で「ポジティブな会話が、なぜ生
産性の向上に役立つのか詳しく知りたい」という類のコメントか
ら新たな研修プログラムが生まれ、成功した例が数多くあります。
これらの例に共通しているのは、受講生の「もっと深く知りた
い、実践して成果に結び付けたい」という“学ぶ姿勢”からにじ
み出た言葉であり、こうした積極的な発想や意見には謙虚に耳を
傾ける価値が大いにあるということです。
■8月13日(火)は休刊といたします。
プロ意識を体現する(14)占部正尚