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ファシリテーションの基礎となる思考方法 クリティカル思考(6)

こんにちは! 毎週水曜日を担当します水江 泰資(みずえ ひろよし)です。
本エッセイでは、少人数の打合せや会議運営で役立つファシリテーション・スキルを紹介しています。先月からはクリティカル思考(CriticalThinking:批判的思考)を取り上げています。そもそもの前提や他の可能性をチェックする機能が特徴です。また、思考の癖(バイアス)を是正する働きがあり、いくつかのバイアスを紹介しました。
今回は「利用可能性バイアス」です。
人は、物事を判断する際に、利用しやすい情報、すなわち、自分の記憶から簡単に思い出しやすい情報を手掛かりにする傾向があります。身近で起こった、または、インパクトがあるなど、想起しやすい情報の影響を受けやすいのです。しかし、クリティカル思考を使えば、判断を誤らずにすみます。
活用事例に、今回もある製造企業の宣伝部での会議を取り上げます。担当者Aさんが企画を主導し、主婦3名だけの試用データから販売を決定した新製品XXの売れ行きが良くなく、その原因を探るための反省会を開いている場面です。
前回、部員たちは「Aさんの勢いに流された自分たちもよくなかった」という反省をしました(原因帰属バイアス:前号参照)。それを受けて、議長が「では、どうして私たちはAさんを止められなかったのでしょうか。勢いに飲まれてしまった自分たちの心の奥をよく振り返りませんか」と投げかけると、各自の意見が述べられました。
 「実は、私も宣伝部の先輩である取締役の話“データに頼るな”を聴いて感動したので…」
 「Aさんはこれまで大きな失敗をしたことがない人だし…」
 「熱意が成功のもと、という某大企業の創業者の名言を読んだから…」
 そこで、クリティカル思考の心得のあるEさんが述べました。
 「皆さん各々の思い出しやすい体験が判断材料になっていますね。しかし、それらは数ある情報のひとつにすぎないという視点も必要ですね」
 部員たちも「自分が利用したい情報だけを選択していました。今後は幅広い情報から判断していきます」と述べました。
 次回も、バイアスを是正するクリティカル思考の活用事例を紹介します。

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