こんにちは!第2・4月曜日を担当するコミュニケーション講師の松原です。
接遇のテクニックを使っても、相手の受け取り方によって悪い結果をもたらす時があります。今回は、声での失敗談から考えます。
最近は感染対策として、人と人との間にアクリル板を立てるようになりました。飛沫が防げる上、相手の表情もクリアに見えると大変有効なのですが、「声が聞こえにくい」という難点があります。そしてこれがトラブルの火種となることがあります。
スーパーでレジを担当しているAさんは男性です。優しい口調と、重い買い物かごでもひょいっと運んでくれる頼もしさもあって評判のいい店員さんです。
夕方、店内は混雑している上BGMも大きく、とても騒がしいです。そんな中、Aさんは高齢の女性の会計をしていました。商品スキャンを済ませ「レジ袋はどうなさいますか?」と尋ねましたが、返事がありません。店内の喧騒とアクリル板のせいで伝わらないのです。そこでもう一度声をかけましたが、やっぱり聴き取れないようです。Aさんは「申し訳ない、もっと分かるように言わなきゃ」と思い、高齢女性の目を見つめてお腹に力を入れ「レジ袋は!?」と言いました。するとやっと、「…いりません」と返答がありました。Aさんは「良かった、聞こえた」とほっとしました。
しかし、その後「お客様の声」の箱に「男性のレジ係が怖い」と書かれた投書が入ったのです。その日の男性店員はAさん一人だったので、彼は愕然としました。「分かりやすいように言ってあげたのに…」
せっかく「相手の目を見て」「聴き取れる声で」と、正しい接遇のテクニックを使ったのに、相手の受け取り方によって悪い結果をもたらしたのです。Aさんが女性であったとしても、同じ結果だったでしょう。
必要なのは、「人の受け取り方は様々だ」という認識です。マニュアルに書いてあるやり方であっても、目の前の相手や状況によっては、絶対ではないのです。声が聴き取りにくいお客様には、レジ袋を見せながら確認するなど、別の工夫も考えられます。
コミュニケーションのテクニックに絶対はない。この点を心に留めて置きましょう。
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「接遇のチカラ」(29) テクニックが通じない時~思っていても伝わらない
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松原 里実
研修講師、地域密着ワークショップファシリテーター →プロフィールはこちら
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