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ファシリテーションの基礎となる思考方法 クリティカル思考(5)

こんにちは! 毎週水曜日を担当します水江 泰資(みずえ ひろよし)です。
本エッセイでは、少人数の打合せや会議運営で役立つファシリテーション・スキルを紹介しています。
先月からはクリティカル思考(Critical Thinking:批判的思考)を取り上げています。そもそもの前提や他の可能性をチェックする機能が特徴です。また、思考の癖(バイアス)を是正する働きがあり、いくつかのバイアスを紹介しました。
今回は「原因帰属バイアス」です。
人は、他人の失敗はその人の能力や性格、自分の失敗は状況や運のせいにする傾向があります。成功した場合はその逆で、他人に対しては運が良かった、自分に対しては能力が優れているから、となります。
しかし、クリティカル思考を使えば、成功や失敗の本質を見誤らずにすみます。
活用事例に、今回もある製造企業の宣伝部での会議を取り上げます。
担当者Aさんが企画を主導し、主婦3名だけの試用データから販売を決定した新製品XXの売れ行きが良くありません。部内では、なぜこんなことになったのかの原因について話し合っており、メンバーが各々の見解
を述べています。
「Aさんの勢いがすごかったからなぁ。つい賛成しちゃったよ」
「反対などしたら、Aさんがショックを受けただろう。Aさんは打たれ弱い性格だしね」
「Aさんの進め方は性急で、積み重ねや地道さに欠けるところがあるしね」
などと、全体的にAさんの性格や能力が原因だという雰囲気になっています。
すると、クリティカル思考の心得のあるEさんが述べました。
「販売決定に至ったのはAさんのせいだけなのでしょうか。Aさんの言い分に私たちも賛成・同意し、販売のGOサインを出しました。もっとしっかり状況分析するなどの意見が出せなかった私たちにも原因があると認識すべきではないでしょうか」
するとメンバーからも、「そうですね、Aさんのせいだけでこうなったわけではない。今後は皆がお互い状況を認識し合い、判断していかないといけない」という声が上がりました。
次回も、バイアスを是正するクリティカル思考の活用事例を紹介します。

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