メルマガバックナンバー 大嶋利佳執筆記事

「強い自分」として話す

 話し方、コミュニケーションの仕方には、唯一の正解はありません。それぞれの場面や相手によって、何をどう言うべきかとの判断は変わります。それに加え私は、「どういう自分でありたいか」もその判断に関わる大きな要素だと考えています。
 ある話し方のビジネス書で、次のようなアドバイスを見たことがあります。
 「緊張しがちな人は、話の始めに正直に、皆さまの前に立ってあがっていますと言ってしまえば良い。そうすれば気が楽になるし、聞き手も好感をもってくれる。」
 このアドバイスが有効な人もいるのでしょう。しかし、前回も述べたように私の講座の受講生がこんなことを言ったら、その場で話を止め、余計なことは言わないようにと注意してやり直しとします。
 それは、受講生に対して「人前に立ったくらいであがってしまうような、弱い自分でありたいのか」を問うためです。誰でも「どんな場面でも動じない、強い自分でありたい」と思うものでしょう。少なくとも「人前に出たらあがってしまう人になりたい」と願う人はいないはずです。
 それなのに「私はあがっているんですよ」と公言し、それを良しとしているようでは何十回話し方の研修やセミナーを受講しても、自信は持てません。
 それに、聞き手が好感を持ってくれるとしてもそれは「気が弱い人なんだな」という見下しや「私もそうですよ」という低いレベルでの共感にすぎません。「あがっています」と軽々しく口にする人に「すごいなあ、私もああなりたい」と尊敬し憧れる人がいるでしょうか。
 話し手がノーベル賞受賞者やプロスポーツのスター選手など、誰が見ても傑出した人物ならば、「あんなすごい人でもあがっちゃうんだな」と、聞き手は親しみを持つでしょう。しかし、普通の人が余計なことを口にすれば、軽んじられるだけです。
 聞き手から「大勢の前なのに落ち着いている、すごいなあ」と思われるようになれてこそ、話し方を習いトレーニングする意味があるのです。

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